静岡市清水区にある清水港は冷凍鮪の水揚げ量、全国トップクラスを誇る港です。そこへ、約1年の長い航海を終えた第八明神丸(みょうじんまる)が着岸しました。第八明神丸は、天然南鮪を中心にインド洋で漁をし、清水港へ帰ってきます。インド洋は、太平洋、大西洋と並ぶ三大洋の1つで、3つの中では最も小さい海ですが、天然南鮪が獲れる漁場としては、1、2番を争う漁場です。そこで今回は、船頭である小清水政春(まさはる)さん、船長である梅田正幸(まさゆき)さんにインタビューしました。
そもそも、船頭とはどんな役割なのか?と思った人もいると思います。船頭とは、どこで鮪を獲るのか、どこからはえ縄を流すのかなどを決める、船の総責任者です。船頭の腕が漁の結果を決める!なんてことも言われるほど、責任重大なポジションです。青森県出身の小清水さんは、漁師歴40年以上、船頭としては3年ほど航海に出ているベテラン船頭です。そんな小清水さんも乗船当初、船酔いがとても酷かったそうです。
仕事に慣れるまでの期間を伺うと、「見てすぐ覚えた。今より力もあったし、人に負けたくなかった」と、話してくれました。おっとりとした優しい口調で話してくれる小清水さんですが、とても負けず嫌いで、仕事熱心。これからも、第八明神丸を最前線で引っ張ってくれることでしょう。
一方、船長とは船の現場全体を取り締まり、現場監督の様な役割を果たす、いわばキャプテンです。そんな船長の役職に就いて20年ほど経つという梅田さんは、航海士としても海に出たことがあるそうです。梅田さんに、船長として一番気を付けていることを聞くと、「やっぱり安全第一だよね」と、話してくれました。航海のルートは、梅田さんが実際に海図を見て決めていて、「他の船のルート記録はあくまで参考程度かな」と、話してくれました。長年の培った経験が、第八明神丸を安全な航路へと導き、旬な鮪が泳ぐ漁場へと正確に連れて行ってくれるのですね。
長年に渡り鮪を獲ってきた小清水さんに、今回の南鮪について聞いてみました。「今年は特に良かった。だけど小船や外国船が乱獲している。2~3年したら減るんじゃないか」と、小清水さんは心配そうな顔をしました。海にはクジラが増え、鮪が食す餌が少なくなっているとも話してくれました。長年に渡り、少しずつ増えてきた漁獲枠。そんな制限がある中、ルールを守らず漁をする漁業関係者がいるのも現状です。今後より良い方向へ変わっていってほしいと願うばかりです。
今回のインタビューを通じ、長い航海を無事終える為に、乗組員一人ひとりがそれぞれの役割を全うすることの大切さが分かりました。毎年、何事もなく帰港できるのは決して当たり前ではなく、第八明神丸がチーム一丸となっているから出来ることだと感じました。それに加え、環境がひと昔前より大きく変化していることも知ることができました。そんな中、第八明神丸は、さまざまな変化に臨機応変に対応しながら漁をしています。「今年もよかった」と、来年のインタビューで聞けることを楽しみに待っています!
2023年3月 取材